アークテック設立の趣旨



 

2000.8.1 改版

 私、井上龍男は、1997年3月末SONY株式会社を退職し、4月初旬にアークテック株式会社を設立致しました。「アークテック=ArchTech」とはArchitecture Technologiesからヒントを得た名称で、プラスチック光ファイバー(以下POF)を用い、家庭とその延長線上にある高速ネットワークを、世界に広めていく為の「仕組み」を考える事を意図しています。
 

  ここでは会社設立に至る過程を皆さんにご紹介することで、私のこれ迄の道程とこれから何をしようとしているのかをご推察頂きたいと思います。それは数年前から始めた英語文化へのChallenge。そしてPOFを熱っぽく語る慶應大学の小池先生との出会いに始まります。この2つの出来事が進展しながら同期して相乗効果をもたらし、私自身を変化させ、遂には「自分でビジネスを始めてみよう」と決断するきっかけとなったのです。

  SONY株式会社を退職する3年ほど前に当時の職場での希望が受け入れられ、北米の工場で半年間働く機会を与えられた時に、現場の工場労働者と苦楽を共にし、生きた言葉と生活習慣を学ぶ事が出来ました。その後 、ATM Forumという国際会議においてDebateの洗礼を受け、強烈なカルチャーショックを味わいましたが、これを1年間かかって受け入れていく過程で「自分の意志をはっきりと表現する者が認められる」という英語文化を理解し、米国の「自由の扉」を開く事が出来たのだと考えています。皮肉な事にこの出来事は当時の業務から離れていく方向に作用し、後に述べる社内プロジェクトを作る端緒となっています。

 帰国後、たまたま小池先生と出会った時、先生は初対面の私にPOFという「禁断の果実」の話をされました。それは光の波動論に基付いた、いま思えば誠に調子の良い話でしたが、「高速で安価な光通信が身近になりつつある」と言う言葉に強い啓示を感じ、私はその日以来、お題目のようにPOF、POFと社内で騒ぎ回るようになってしまいした。

 

 その後、「光通信」という観点から社内での勉強会を始め、そこから発展して"WINS"というPOFをテーマにしたプロジェクトをスタートさせることが出来た時には、小池先生との出会いから既に2年経っていました。WINSプロジェクトでは「開発/試作」と「マーケティング」の2つの活動があり、私は主に後者を担当していましたが、プロジェクト活動を約1年間進めてきた私の結論としては「1社の利益を優先させていては大きな市場を開拓出来ないであろう」と言うものでした。それではせっかく始めたプロジェクトで開発/試作しているすばらしい物も行き場(市場)が無くなってしまいますので、何とかしなくてはと思い悩んでおりました。

 一方、そのプロジェクト活動の一貫としてSONY在籍時代に数多くの国際会議に参加してきたお陰で、POFとその周辺機器のエキスパートの皆さんと知り合う機会に恵まれました。そしてDebateとDiscussionとを重ねていく内にお互いの信頼関係が高まり、それからは会社を超えた個人としての付き合いが出来るようになりました。

 

 また、POF ConsortiumというPOFを研究・開発する団体が設立されて以来、幹事の一員として会の運営に携わってきた事もあって、国内の有力企業の方々とも交流を深める事が出来ました。これら国内外の人々との繋がりが現在の「アークテック」の貴重な財産となっています。

 

 今年2月にDallasで開かれた光ファイバー関連の最大の催しであるOFC'97では、POF関連のブースがその一角を占め、POFをテーマとした様々なセッションが開催され、従来のガラスファイバーに対するPOFの活躍ぶりを目の当たりにしました。それ以来、私はPOFの将来性にいっそう強い期待を抱くようになりました。

  というわけで、遂に既存の会社組織に囚われない動きをしてみようと思い立ったわけです。「無謀だ」と言われる方や、「よくやった」と言われる方など反応は様々ですが、やはり北米の方が好意的に受け取っているようです。それは彼らの中に「所属(会社)は変わっても自分のやるべき事は変わらない」という思想があるからでしょうか。
 

以上

2000年8月1日  
アークテック株式会社
代表取締役 井上龍男

 




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